Hans Potterの日々

映画と音楽と本、そして食べることが好きなオジサンです。徒然なるままに…

金沢シャッターガールで巡る金沢 Part1

金沢シャッターガール

原作と映画

金沢が舞台の「金沢シャッターガール」。
映画化されましたが、残念ながら観ていませんし未DVD化です。

今回は桐木憲一さんの原作で金沢巡りをします。

映画の予告編やHPなどで確認すると、原作と映画ではストーリーが違いますし、登場する場所も違います。それを前提にご覧ください。

桐木憲一さんの原作

金沢を舞台にした桐木憲一さんの原作には、金沢の人間でも知らないようなことも書かれています。

勿論、定番の観光スポットも紹介されていますので、コミックですが金沢の観光ガイドブックとしての利用も可能…かな。

尚、原作を読んだ方はご存知でしょうが、心霊スポットも登場します。私は心霊スポットが不得手(苦手)なので省き、他の部分を過去の撮り溜めした写真の中から選ぶことにしました。
結果として、心霊スポットなど何ヵ所かはご紹介できませんので悪しからず。
また、原作では、主人公の実家は “夏目寫眞機店” です。カメラの種類や撮影テクニックなど色々出てきますが、原作に登場する金沢を巡ることを主眼にしました。

先ず、表紙は主人公の夏目花奈、高校生です。

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金沢シャッターガール

第1話 夏目寫眞機店

卯辰山からの俯瞰図

主人公の自己紹介から始まります。金沢駅の鼓門、卯辰山から梅ノ橋方向を見ている構図、石川門などを巡りながらの自己紹介です。

卯辰山から梅ノ橋方向を見ている絵は、恐らく卯辰山山麓寺院群の宝泉寺からの風景だと思います。

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桐木憲一さんの原作より

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宝泉寺から

ここ宝泉寺は1978年の映画「野性の証明」でも登場します。初々しい薬師丸ひろ子さんと夏八木勲さんが写っています。薬師丸ひろ子さん、14歳の頃です。

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映画「野性の証明」のシーン

野性の証明」はブログで取り上げたことがあります。 

hanspotter.hatenablog.com

軍都、金澤 

金沢城内に残る、旧陸軍省の遺構が登場します。

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桐木憲一さんの原作より

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ここですね

金沢を訪れる観光客は、金沢=城下町との認識でしょうが、市内観光をすると煉瓦造りの建物が意外と多いことに気付くと思います。
明治政府は、日本海を挟んでロシア・中国(清)と対峙しました。その結果として、陸軍の第7連隊や第9師団 が置かれた日本海側の金沢は間違いなく “軍都” でした。

従って、明治や大正期の煉瓦造りの陸軍関連施設が数多く建てられました。
金沢城も明治から旧陸軍省の管轄となっています。

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明治42年金沢城近辺(「今昔マップ on the web」より http://ktgis.net/kjmapw/index.html

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昭和5年金沢城近辺(「今昔マップ on the web」よりhttp://ktgis.net/kjmapw/index.html

明治時代と昭和初期の地図には、金沢城内に師団司令部、旅団司令部の地図記号が記されています。

下の師団司令部と旅団司令部の記号を探してください。金沢城内の中央部分で見つけることが出来ます。

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関連する地図記号

城内の旧陸軍省の跡

金沢城内に第6旅団司令部の建物が残っています。立派な門が残っていますが、藩政時代は何があったんでしょう…。

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旧第六旅団司令部前

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旧第六旅団司令部

鶴丸倉庫は陸軍の被服庫として使われていました。

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鶴丸倉庫

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鶴丸倉庫の説明

城外の旧陸軍省の名残

金沢は戦災や大きな災害が無かった町です。そのお蔭で古い建物が沢山残っています。

兼六園の近く、赤レンガミュージアムとして利用されている三棟の煉瓦造りの建物は、旧金澤陸軍兵器支廠、兵器・弾薬などの補給を管轄する部門の兵器庫でした。

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赤レンガミュージアム

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赤レンガミュージアム

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旧金澤陸軍兵器支廠 兵器庫通用門(復元)

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旧金澤陸軍兵器支廠関連

この煉瓦造りの建物は、戦後、昭和21年から昭和47年まで、金沢美術工芸大学が使用していましたが、建物内が暗くてデッサンなどに苦労したそうです。

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金沢美術工芸大学創設之地碑

旧陸軍の第9師団司令部庁舎と金沢偕行社の建物は、赤レンガミュージアム横の国立近代美術館工芸館として移築・利用されます。

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旧陸軍 第九師団司令部と金沢偕行社の建物

かつては “軍都” 金沢の象徴であった旧陸軍省の建物たちは、現在では美術館・博物館として再利用され、金沢の平和な町並みに溶け込んでいます。

さて、原作では、この後、母を訪ねて来日したユーリが  “夏目寫眞機店” を訪れ、主人公の夏目花奈と出会います。ここからストーリーが展開していきますが、第2話へ入る前に、金沢駅金沢城のコラムがあります。
金沢駅については下記のブログで取り上げたことがあります。参考まで。 

hanspotter.hatenablog.com

第2話 金沢城公園

金沢城の変遷

金沢城は明治から先の大戦まで旧陸軍省の管轄でしたが、その間に、軍の施設の建設や火事などで、藩政時代から金沢城にあったものの大部分が失われてしまいました。
今となれば勿体ない話です。
また、藩政時代の火事で五層からなる天守も失われました。百万石を超える最大の外様大名だった前田家は、徳川幕府への忖度、それと天守自体の意味がなくなっていたこともあり、天守の再建はしませんでした。

仮定の話ですが、百万石の大名の城です。天守が残っていれば、さぞや見事なものだったでしょう。観光名所の石川門は正門ではなく搦手門です。極論すれば庭(兼六園)へ続く勝手口の裏門ですが、勝手口の門ですらあの立派さです。その石川門も霞んでしまうほどの天守の規模だったようです。
尚、戦後から平成7年までは金沢大学が場内にあり、お城の中の大学として有名でした。地図にも記載されていますし、石川門の近くに金沢大学の碑があります。

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昭和43年の金沢城近辺の地図(「今昔マップ on the web」よりhttp://ktgis.net/kjmapw/index.html

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金沢大学の碑

紺屋坂

さて、夏目花奈とユーリの二人は、お土産屋さんが軒を連ねる紺屋坂を通り、石川橋を渡って石川門へ向かいます。

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桐木憲一さんの原作より

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紺屋坂

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紺屋坂

撮り溜めした紺屋坂の写真では、雨の中、外国人観光客、和服に着替えて散策する若い女性観光客、そして修学旅行の生徒さんたち。金沢市内でよく見かける光景です。

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紺屋坂

石川門

二人が向かった石川門はテレビなどに、よく登場します。

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桐木憲一さんの原作より

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石川橋から石川門方向

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春の石川門

今回は、石川門の中から撮った写真もどうぞ。

石川門は「枡形門」です。一の門を通った敵は二の門に行く手を阻まれ、枡形(下の写真の石垣に囲まれた四角い部分)に留まらざるを得ません。

そこへ石垣の上方の銃眼から…。石落としから石も落とされるでしょう。

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枡形

下の写真は枡形を上から見た写真です。石川門を通り抜けた敵は、内部からはこんな風に見えるんだ、と変な感想。内部では石落としも確認できます。

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石川門の中から

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内部です

それと二の門の扉。昔、サントリーオールドのCMに使われていた記憶があります。

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石川門

玉泉院丸庭園

城内を通って玉泉院丸庭園へ。ここも明治以降埋め立てられていましたが、当時の資料を基に復元されました。

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桐木憲一さんの原作より

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玉泉院丸庭園

この庭に限らず、金沢城内に復元された建物は、当時の資料に基づき、当時の工法で復元されています。安易にコンクリート造りとはしていません。手間暇はかかるでしょうが。

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橋爪門櫓、五十間長屋、菱櫓(復元された建物)

石垣の博物館

それと金沢城は石垣の博物館と言われるほど、いろんな時代の石垣が残っています。玉泉院丸庭園や城内、城外にも…。

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石垣と石垣の刻印の説明板

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いもり堀横の石垣回廊

白鳥路

二人は白鳥路を通って帰路に。

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桐木憲一さんの原作より

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桐木憲一さんの原作より

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白鳥路

続く…

原作には、桐木憲一さんが金沢を散りばめています。
観光で訪れる予定の方は金沢観光のガイドブックとして読むと面白いですし、金沢在住の人もマニアックな部分は面白いと思います。
桐木憲一さんの原作は詳細です。長くなりそうなので、今回もここまでをPart1 とします。

それと主人公の実家 “夏目寫眞機店”。モデルの建物があると思いますが分かりませんでした。

原作者の桐木憲一さんにお聞きするしかないかな…。