一億円のさようなら
9月も残り一日。
コロナ禍で家飲みが多くなりました。
ひやおろし
“今年の石川県における「ひやおろし」の一斉蔵出しは九月八日だった。
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)”
家で「ひやおろし」を飲んでいると、白石一文さんの「 一億円のさようなら」を思い出しました。
「ひやおろし」とは…。
白石一文さんの原作から引用します。
“「ひやおろし」というのは春先に火入れ(加熱殺菌)した新酒をひと夏寝かせ、二度目の加熱殺菌をしない「冷や」のまま樽に「卸して」出荷する酒のことをいう。
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)”
ボジョレーヌーヴォーのように解禁日が決まっている日本酒です。
一億円のさようなら
昨年(2020年)の9月27日から11月15日まで、8回に渡って放送されたNHK BSプレミアムドラマ「一億円のさようなら」。
ドラマでは、上川隆也さん演ずる主人公、加能鉄平の故郷が舞台でしたが、直木賞作家 白石一文さんの原作では金沢市が主な舞台となっています。
金沢の町が詳しく紹介され、石川の食が随所に登場し、地元の人間にとってはとても嬉しい内容の小説です。
勿論、石川の美味しいお酒、そして、ひやおろしも登場します。
昨年の9月から11月にかけて、原作で金沢巡りのブログを書きました。個人的な事情(10日ほどの入院)のため中途半端になりました。
日本酒を避けていた頃
実は、私が日本酒を好んで飲みだしたのは20代も半ばを過ぎた頃からです。
新入生歓迎コンパ
理由は単純。学生時代に原因があります。
大学時代の新歓コンパ。
大学近くの飲み屋の二階。宴が進み、酔いが回ってくると一気飲みの開幕です。
一気飲み三段活用
薬缶で直接温めた酒と、ビールやらウィスキーやらをごちゃまぜに注ぎ入れての一気飲み。
最初はコップ、そして丼、最後は洗面器。一気飲みの三段活用です。
アルコールに強い体質だったのか、私はそれほどの被害はありませんでしたが、戻す新入生が続出。幸い、救急車や病院の世話になった者はいませんでした。
ベタベタした甘い酒
二次会は、居酒屋チェーンの養〇乃瀧。ここでも一気飲みの三段活用です。
これらの酒に共通していたのは、とにかく安かったこと、そして、甘くてベタベタしていたことです。味もベタベタ、コップを持った掌もベタベタでした。
(※ 随分過去の話ですから、今ではそうじゃないと思いますが)
それ以来、自ら日本酒を飲むことは20代半ば過ぎまでありませんでした。飲むのはウィスキーやワインが殆どでした。
美味しい日本酒
菊姫 大吟醸
25歳を過ぎた頃、富山出身の職場の先輩が大事そうに一升瓶を抱えてきました。
この日を境にお酒を飲むようになりました。「美味しんぼ」は連載開始前です。
お歳暮
「あのお酒が美味しい」と軽々に口にしたものですから、連れの実家から菊姫大吟醸の一升瓶が毎年のお歳暮で届くようになり、嬉しいやら、恐縮するやら。
「あれこれ選ばなくても良いから楽ですよ」と連れの実家。私に気を遣わせないための心配りの言葉ですね。m(_ _)m
最近は…
昨今は、年齢も年齢ですし、また、新型コロナウイルス対策で,皆で集まっての飲食を避けていることもあり、720ml(四合)瓶を飲むことが多くなりました。
“新潟や富山にもひけを取らない白山水系という上質の水脈を持ち、米どころとしても知られる石川県には銘酒の蔵元が多数存在する。加賀といえば「天狗舞」や「手取川」、「菊姫」などが全国的な銘柄として知られているが、ほかにもうまい酒がたくさんあった。
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)”
大手日本酒メーカー(誰でもCMで一度は名前を聞いたことがある国内トップクラスの酒造業)の営業担当者が、「金沢では(販売に)苦労しています」と、正直に話していたのを思い出しました。




加能鉄平、いや、白石一文さんにここまで褒めていただいた石川県の酒です。
さぁ、どれを飲もうか。
ひやおろし、再び
10月半ば
“四校記念公園のモミジバフウの並木も色づき始めた十月半ばの日曜日。
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)”
10月半ば、加能鉄平は木蓮の板長、櫛木穣一と菊助で飲んでいます。
鉄平が小松空港に降り立ったのが2月7日。初めて木蓮を訪ねたのが3月1日。はちまき寿司の開店から四カ月半経っています。
ひやおろしをぬる燗で
“暑い夏のあいだ、 ひんやりとした酒蔵でじっくりと熟成させた「ひやおろし」は、地元の人にとっては加賀・能登の秋の豊かな食材に欠かすことのできない相棒であるようだ。 出荷直後のひやおろしが「夏越し酒」、秋も深まったところで飲むのが「秋出し一番酒」、そしてさらに熟れ切ったものを「晩秋旨酒」と業界では 呼んでいるらしい。
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)”
加能鉄平と木蓮の板長が飲んでいるのは、
“今日は「常きげん」のひやおろしをぬる燗で飲んでいる。
板長によれば、ひやおろしの一番は「常きげん」なのだそうだ。「このひやおろしは酸味とうまみの〝 間合い〟が抜群なんです」 とのこと。
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)”
秋が深まり雪吊りの準備が始まる頃にでも「常きげん」をぬる燗で飲んでみよう。
あては勿論、新鮮な魚介で・・・。
“金沢は、魚にしろエビにしろカニにしろ種類と鮮度が抜群で、東京どころか博多と比べてさえ一枚上手の感がある。
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)”