Hans Potterの日々

映画と音楽と本、そして食べることが好きなオジサンです。徒然なるままに…

光る君へ 「源氏物語」で思い出すイントロクイズ

光る君へ

源氏物語

いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に…”

この出だしだけで、すぐに「源氏物語!!」と正解する人が多いでしょうね。

古文の授業でお目にかかった源氏物語の冒頭です。

源氏物語」(学習研究社 実用特選シリーズ)

枕草子

先週、NHKの「光る君へ」に清少納言が登場。

吉高由里子さん演ずる主人公 まひろ(紫式部)との初顔合わせでした。

「光る君へ」の世界が「源氏物語」から「枕草子」にも広がりました。

紫式部清少納言の関係

紫式部清少納言は、宮廷に出仕していた時期が違っていたので顔合わせは無かったとも言われています。

にも拘わらず、清少納言は、紫式部から糞味噌の言われよう。

清少納言こそ、したり顔にいみじう侍りける人。さばかりさかしだち、真名書き散らして侍るほども、よく見れば、まだいと足らぬこと多かり(出典:紫式部日記)”

更に雑言は続きます。

千年の時を経ています。紫式部の真意や如何…。

下記WEBサイトをご参照ください。

toyokeizai.net

dictionary.sanseido-publ.co.jp

先週の初顔合わせでのファーストサマーウイカさんの台詞。

二人の関係への伏線…かな。

ファーストサマーウイカさん

清少納言役のファーストサマーウイカさん。

個人的にはお初の方なのでググりました。

旧芸名は、本名の堂島初夏さんから ”初夏(ういか)”。

現在の ”ファーストサマーウイカ” の由来は、

”「初夏」と書いてウイカが本名なのですが、(中略)「アーリーサマー」という名前を思いつきました。しかし、既存の言葉になってしまうので、造語で「ファーストサマーウイカ」と名付けました。(出典:下記ニッポン放送のWEBサイト)”

#8 ファーストサマーウイカさんの名前の由来とは?背景にある戦略を伺いました! | 望月智之 イノベーターズ・クロス | ニッポン放送 ラジオAM1242+FM93

とのこと。

洋の東西を跨いだ重言(重語)擬きのようです。

イントロクイズ

中高時代の試験問題

話を戻します。

中学、高校のテストで、今で言えばイントロクイズのような問題がよく出ていました。

作品の冒頭の文から作品名や著者名を答える問題です。

古典は勿論、明治、大正、昭和の作品も対象でした。

いづれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひたまひける中に…”

先程の源氏物語の冒頭も定番です。

源氏物語」(学習研究社 実用特選シリーズ)

古典に関しては原文で出題されますので現代語訳で読んでいても分かりませんが、対象となる作品は限られていましたから意外と簡単でした。

最近ではどうなのかは知りませんが、当時は流行りだったんでしょうか。

記憶の範囲で例題を少し

次の文の作品名を記入せよ

”今は昔 竹取の翁といふものありけり(出典:竹取物語)”

”ゆく河の流れは絶えずして しかも もとの水にあらず(出典:方丈記鴨長明)”

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 娑羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらはす(出典:平家物語)”

どうです?思い出してきましたね。

続いて、江戸時代から近世、近代へ。

”月日は百代の過客にして 行かふ年も又旅人なり(出典:奥の細道松尾芭蕉)”

”山路を登りながら、かう考へた(出典:草枕夏目漱石)”

木曽路はすべて山の中である(出典:夜明け前、島崎藤村)”

”山の手線に跳ね飛ばされて怪我をした(出典:城の崎にて、志賀直哉)”

”えたいの知れない不吉な塊が私の心を…(出典:檸檬梶井基次郎)”

”国境の長いトンネルを抜けると雪国であった(出典:雪国、川端康成)”

”幼時から父は、私によく、金閣のことを語った(出典:金閣寺三島由紀夫)”

大部分の問題は通常の読書で分かる範囲でしたが、時々マニアックな出題をする先生がいました。

”先生、わたし今日はすっかり聞いてもらうつもりで伺いましたのんですけど(出典:卍、谷崎潤一郎)”

流石に中高時代の私の読書歴にはありませんでした。

他に、短歌や俳句の作者問題も。

美しい日本語の響き

「光る君へ」で吉高由里子さんが演ずる主人公 まひろ(紫式部)から

いづれの御時にか、女御、更衣あまた…(出典:源氏物語)”

を思い出し、清少納言役のファーストサマーウイカさんの登場で

”春はあけぼの やうやう白くなりゆく山ぎは…(出典:枕草子)”

が頭に浮かびました。

そこから中学、高校時代の試験問題を思い出した次第です。

何の役に立った? と言われても明確な答えはありませんが、少なくとも一般常識としての知識は蓄えられましたし、美しい日本語(の響き)に出会えたと思います。

音楽と同じでイントロは大切です。

声に出して読みたい日本語

一冊の本

ここで書棚の奥に眠っていた本を一冊取り出します。

「声に出して読みたい日本語(齋藤孝草思社)」。

初版発行が2001年9月。21世紀初頭のベストセラーです。

「声に出して読みたい日本語」(齋藤孝著、草思社

2001年の年間ベストセラー

この年のベストセラー。

チーズはどこへ消えた?」「ハリーポッターシリーズ」「金持ち父さん 貧乏父さん」「話を聞かない男、地図が読めない女」「プラトニック・セックス」「仕事ができる人 できない人」など、読んではいなくても聞いたことのある本ばかりです。

その中に混ざって「声に出して読みたい日本語」は総合18位にランクインしています。(トーハン調べ)

https://www.tohan.jp/pdf/2001_best.pdf

この本には、中高で記憶した作品の冒頭が網羅されて……はいませんが、源氏物語枕草子は勿論載っています。

初っ端の

”知らざあ言って聞かせやしょう(出典:歌舞伎 弁天娘女男白浪)”

や、

”赤城の山も今夜を限り…(出典:新国劇 国定忠治)”

”観自在菩薩…(出典:般若心経)”

など中高の私には対象外だったものもありますが、先程の例題のほかにも、

”つれゞなるままに…(出典:徒然草吉田兼好)”

”男もすなる日記と…(出典:土佐日記紀貫之)”

などの古文の教科書でお馴染みの作品や、

”幾時代かがありまして…(出典:サーカス、中原中也)”

”まだあげ初めし前髪の…(出典:初恋、島崎藤村)”

”道がつづら折りになって…(出典:伊豆の踊子川端康成)”

等々が。

久しぶりに読みました。小学校では黙読を指導されましたが、この美しい日本語をまた声に出して読んでみたくなりました。

個人的に好きな…

勿論、日本文学だけではなく外国のそれを対象にしたテスト問題もありました。

その中で、私が個人的に美しいと感じた文を二つ。

”私の耳は貝の殻 海の響をなつかしむ

(出典:ジャン・コクトー「耳」、堀口大學訳)”

山のあなたの空遠く「幸ひ」住むと人のいふ 噫われひとと尋めゆきて

涙さしぐみかへりきぬ 山のあなたになほ遠く「幸ひ」住むと人のいふ

(出典:カール・ブッセ「山のあなた」、上田敏訳)”

次回へ

この冒頭だけのイントロクイズも面白いのですが、下の本(「小説検定」南陀楼綾繁)は内容を知っていないと答えるのが難しい問題が多かったですよ。ただし、二択、三択なのである程度の一般常識があれば答えを導きだせます。

最近(と言っても10年前の平成26年発行です)の本も出題されていますので。

「小説検定」(南陀楼綾繁新潮文庫

源氏物語について書こうと思っていましたが、ついつい別の方向へ、

次回からは源氏物語に関する思い出を。

では次回へ。