案の定、NHKのBSプレミアムドラマに金沢は登場しませんので、このブログでは原作の鉄平の行動に沿って金沢を巡り続けます。
一億円のさようなら
直木賞作家 白石一文さんの小説「一億円のさようなら」には金沢の町や石川県の食が沢山登場します。地元の人間にはとても嬉しい小説です。
主人公の加能鉄平の行動に沿って金沢を巡っていますが、その Part 3 です。
前回までのブログは下記リンクで。
鉄平の回想
藤木波江
“──そろそろ藤木を訪ねてみようか……。”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
鉄平は、波江が片町でやっている「木蓮」という小料理屋を訪れようと…。
そして回想。
事件
小学校、中学校の記憶。
高松琢磨との確執、そして中学三年の “あの” 事件………。
“なぜ部外者であるはずの自分があれほどの怒りを滾らせてしまったのか?”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
“自分には宅磨の邪悪さがはっきりと分かるのだ。”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
鉄平が “エゴのバケモノ” と思っていた琢磨。
そんな琢磨の邪悪さがどうして鉄平に分かるのか。
“鉄平自身の中にも、あの高松宅磨と同じ資質がしっかりと根付いているからに他ならない。”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
高校入学後、母の再婚により遊星、波江一家は名古屋へ引越していきます。
再び現在の金沢へ。
はちまき寿司
「木蓮」の表さん
“「はちまき寿司かあ、懐かしいなあ」
堀部青年が手にしたボールペンを耳のあたりで振りながら言った。
「知ってるんですか、はちまき寿司?」”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
「木蓮」の従業員、表さんのおばあちゃんがやっていた手巻き寿司の「はちまき寿司」。
堀部青年の懐かしいなあという言葉を聞いて、
“表さんが言っていた「すごい人気だったんですよ。うちのおばあちゃんのお店」という言葉が噓でないのを改めて確認した思いだった。”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
ちくは寿し
「はちまき寿司」のモデルは、金沢の新竪町にあった手巻き寿司の人気店「ちくは寿し」です。
残念ながら平成29年4月で閉店しています。
ちくは寿しをGoogle ストリートビューで
「ちくは寿し」のあった場所は、別のお店になっています。
ちくは寿しのあった場所(2019年7月のGoogle ストリートビュー)
Google ストリートビューのタイムマシン機能で、2015年5月まで遡ったのが下です。
残念。定休日なのかシャッターが下りています。
ちくは寿し(2015年5月のGoogle ストリートビュー)
さらに遡ります。今度は営業中の「ちくは寿し」です。
ちくは寿し(2012年10月のGoogle ストリートビュー)
不思議な縁
小説の「はちまき寿司」は五年前の閉店という設定ですが、「ちくは寿し」は平成29年4月の閉店。
「一億円のさようなら」の連載開始が2017年4月ですから、連載を開始した年月を最後に閉店しています。なにか縁を感じます。
白石一文さんも立ち寄ったことでしょう。
竪町商店街
“「竪町商店街というのは絶対条件ですか?」
手元のメモを見直して堀部青年が訊いてくる。”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
表さんと「はちまき寿司」を復活させるために、鉄平は店舗探しを堀部青年に依頼します。
候補は竪町商店街。繁華街の片町と接した立地、そして香林坊からもアクセスし易い場所です。
映画ロケでニアミス
話は飛びますが、2008年の映画「ダイブ!!」で、林遣都さんが金沢市新竪町を自転車で走っています(映画の設定は東京郊外の市となっていますが)。
この30mほど後方が「ちくは寿し」です。2008年ですから当然営業中ですね。
桜の季節になっていた
四月十日月曜日
堀部青年と別れた鉄平。
“今日は四月十日月曜日だった。”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
もう四月。
真冬の二月に小松空港に降り立ってから二ヵ月が経過しています。
“金沢も東京から一週間ほど遅れて桜が満開の時期を迎えている。”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
兼六園の桜
金沢城公園の桜
犀川沿いに咲く桜
“兼六園の桜も金沢城公園の桜も美しいが、鉄平が一番気に入ったのは犀川沿いに咲く桜だった。”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
生きている絵画
“遠く白山連邦の雪をかぶった山並みと桜の花々とが重なって、まるで〝生きている絵画〟のような情景になるのだ。”
(出典:白石一文. 一億円のさようなら.徳間文庫)
金沢の桜
他にも、金沢を第二の故郷と呼ぶユーミン(松任谷由実さん)が好きな浅野川沿いの桜など色んな桜を楽しめます。
長くなってきました。次回へ続きます。