Hans Potterの日々

映画と音楽と本、そして食べることが好きなオジサンです。徒然なるままに…

禅寺でファンシイダンス

ファンシイダンスと大乗寺

映画 ファンシイダンスのロケ地

金沢市郊外に大乗寺というお寺があります。お寺の名前を冠した大乗寺丘陵公園が隣接している曹洞宗の古刹で、正応2年(1289年)または正応4年(1291年)の開山と伝えられています。
この大乗寺は、1989年の映画「ファンシイダンス」のロケ地に使われました。

周防監督と多彩な出演者たち

それまで成人映画の監督だった周防正行さん。

一般映画の監督第一作ですから力が入っています。


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出演者も本木雅弘さん、その恋人役に鈴木保奈美さん、まだ33歳の竹中直人さん、本木さんがザ・ブロードサイド・フォーの名曲「若者たち」を歌うときのバックバンドが東京スカパラダイスオーケストラなど、とても豪華です。(因みに、ザ・ブロードサイド・フォーは、故 黒澤明監督の御子息、黒澤久雄さんが結成したフォークバンドです。)

モックンは究極のアシメヘアー! スカパラにも注目!

撮影当時の本木雅弘さんは、所属していたジャニーズ事務所の「シブがき隊」が1988年に解散したばかり。

記念すべき初主演の映画ですから力が入っています。

映画の冒頭で向って左が長髪、右が剃刀で剃った坊主頭の究極のアシメヘアーで歌いながら登場します。

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映画のシーン

バックバンドの東京スカパラダイスオーケストラもメジャーデビューする1年前です。

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映画のシーン

鈴木保奈美さんも女優デビュー後間も無く、あのテレビドラマ「東京ラブストーリー」出演の2年前でした。

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映画のシーン

竹中直人さんは既にコメディアンとしての実績はありましたが、大河ドラマの秀吉役に抜擢される7年前の出演です。
これらの条件に監督の演出力が加わり、出演者全員の演技が若々しく活き活きとしているように感じる映画です。

Shall we ダンス?へと続く映画

他の出演者も、田口浩正さんは芋洗坂係長とお笑いコンビを組んでいたころですし、現在ではグルメリポーターとして有名な彦摩呂さんもアイドル時代です(体形が現在と違いますね)。
周防正行監督は、この映画の2年後には「シコふんじゃった。」、7年後には「Shall we ダンス?」を発表します。

監督が30代から40代の油の乗り切っていた時代の映画で、三作とも傑作だと思います。
本木さんは「シコふんじゃった。」と「Shall we ダンス?」、竹中さんと田口さんも「シコふんじゃった。」と「Shall we ダンス?」に出演していますから、「ファンシイダンス」が原点とも言えるのではないでしょうか。
上記の三作とも所謂業界ものです。

「ファンシイダンス」の原作は漫画ですから何とでもなりますが、実写の映画でよくぞ業界(お寺)が撮影を許したものだと思います。
なにしろ30年前の映画です。DVDで確認すれば「えっ!?」と思うような新しい発見があるかも知れませんよ。

出演者を頭に入れて観たほうが面白いと思います。

大乗寺の思い出

加賀藩筆頭家老 本多家の菩提寺

全国の大名の3分の2が五万石以下だった江戸時代に、加賀藩には加賀八家と呼ばれる禄高1万石以上の大名クラスの家老が8人もいました。

筆頭家老である本多家の禄高は5万石。忠臣蔵で有名な浅野家の石高も5万石です。筆頭とは言え、家老の石高が大名と同じですから驚きます。

大乗寺はこぢんまりとした印象ですが、流石に加賀八家の筆頭家老、本多家の菩提寺だけはあります。

仏殿は国指定の重要文化財、総門(黒門)・山門(赤門)・法堂(はっとう)は石川県と金沢市の指定有形文化財になっています。

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大乗寺

明治30年に発行された「北陸名所図会」に、金澤名所として「城南 大乗寺 門前の図」が載っていますから、昔から有名なお寺だったようですね。

上の写真(実写)と下の錦絵を比べると、ほとんど変わっていないように見えます。

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「北陸名所図会」金沢市立玉川図書館近世史料館所蔵(写真提供:金沢市

【金沢市画像オープンデータ】画像詳細

映画「ファンシイダンス」のエンドロールあたりにも この山門(赤門)が使われています。山門(赤門)の奉納幕に「寄贈 長坂町婦女會」と、地元の町名が染め抜かれていました。また、扁額に「東香山」の山号が見えます。

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映画のシーン

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映画のシーン

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映画のシーン

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映画のシーン

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大乗寺

夏場に訪れても樹木が日光を遮ってくれます。朝早くに行くと、清掃したりお花を供えたりしている方々を見かけることもあります。

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大乗寺

寒行托鉢

大乗寺近隣での寒行托鉢が冬の風物詩として知られていますが、新しい住人の中には応対の仕方が分からない人も増えているようです。

網代笠に脚絆の修行僧が、雪の中を各戸の玄関先で読経されています。足がとても冷たそうです。

映画「ファンシイダンス」でも寒行托鉢のシーンがありました。映画だけに不謹慎な場面もありましたが…。

福井の永平寺の拝観時にも説明がありましたが、寒行托鉢の修行僧だけでなく、僧侶を安易に撮影することは避けましょうね。

坊主頭で初めてのカルチャーショック

私の家は大乗寺と同じ曹洞宗で、幼い頃このお寺で坐禅を組んだ記憶もあり、お坊さんは剃髪しているものだと思っていました。
加賀の一向一揆は有名ですが、それほど浄土真宗が盛んな金沢では周囲の家はほとんどが浄土真宗です。
小さい頃、同級生のお宅(浄土真宗)の通夜で吃驚したのは、お坊さんが所謂 坊主頭ではないことでした。生まれて初めてのカルチャーショックです。
このお寺にもいろんな思い出が詰まっています。

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大乗寺