2,3,4月と、大河ドラマ「光る君へ」関連のブログが続いています。
今月も「源氏物語」に関連した能の話題です。
芸能きわみ堂
NHK Eテレの芸能きわみ堂で、大河ドラマ「光る君へ」の連動企画、「愛と嫉妬の能『葵上』(後編)」を視聴しました。
「源氏物語」の「葵」を題材とした能です。
源氏物語「葵」(前回の続き)
先ずは、能「葵上」の元ネタ、源氏物語「葵」について、前回ブログの続きです。
「源氏物語」では「葵」、能楽では「葵上」と、光源氏の正妻 葵上がタイトルになっていますが、実質的にはその葵上を生霊となって苦しめる六条御息所が主役ですね。
伝え聞いた光源氏が詫びに赴くも門前払いとなります。
そして生霊となり葵上を苦しめ死に追いやった六条御息所。
六条御息所についての知識があれば、その恨みの深さが分かりやすいと思います。
六条御息所
六条御息所は東宮(皇太子)の妃でしたが、二十歳で東宮と死別。
光源氏の七歳年上、才色兼備の高貴な女性です。
”能楽「葵上」に登場する六条御息所にヒントを得て、嫉妬の炎ゆえに生霊となった女性を描いた作品(出典:Wikipedia)”
と言われています。
東宮と死別後、光源氏と恋愛関係になりますが、その美しさ、前東宮の妃という身分や教養の高さ等々、併せて独占欲が強く、プライドの高い六条御息所を源氏は持て余し、敬遠気味となります。
風と共に去りぬ
ここで突然ですが「風と共に去りぬ」。
スカーレット・オハラと六条御息所
六条御息所のプライドの高さは、恐らく「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラと似たり寄ったりでしょうか。
片眉を上げたヴィヴィアン・リーを思い出します。
光源氏が六条御息所を敬遠したのも、クラーク・ゲーブル演ずるレット・バトラーがスカーレットを持て余したのと同じかな。
類似点もありますが…
牛車での車争い、ボニーのポニーからの落馬事故。
牛と馬。動物絡みの事件という類似点はありますが、そこは日本の女性。
六条御息所はスカーレット・オハラのように勝気ではありません。独占欲は強いものの矜持が邪魔をして素直になれず、自己抑圧で悶々とする日々を送ります。
光源氏が22.23歳ですから、7歳年上の六条御息所はアラサー。
今の日本と違い、平均寿命が40,50歳。
男性が17,18歳前後、女性は13歳くらいで結婚していたと言われる平安時代です。
年齢差も悶々とする要因だったでしょう。
3月のブログで登場した大和和紀さんの漫画「あさきゆめみし」が六条御息所の心情を端的に表しています。下記WEBサイトがとても参考になります。
葵上
一方、光源氏の正妻 葵上。
葵上も源氏より年上です。
親の決めた結婚。また、光源氏の理想が藤壺の宮であること、光源氏への初対面時の印象や葵上自身の性格もあり、冷めた夫婦関係(別居婚)でしたが10年経った頃に葵上が懐妊。
これを機に、源氏は六条御息所から、ますます遠ざかります。そこへ車争いが。
光源氏とレット・バトラー
NHK Eテレの趣味どきっ!「源氏物語の女君たち」では可愛いイラストで描かれた六条御息所ですが、
生霊となって葵上を苦しめた六条御息所は、悪役のように扱われることも多々あります。
個人的な感想ですが、六条御息所と親密になった後の光源氏。彼の六条御息所に対する仕打ちは非道い。前半のハイライトとも言える六条御息所の生霊の話は、全て光源氏の所為ではないかと。
先程の「風と共に去りぬ」。
もしレット・バトラーと光源氏を比較するとすれば、私は迷わずレット・バトラーに軍配を上げます。
愛と恋
光源氏が逢瀬を重ねた女性は数多存在しますが、源氏が「愛」した女性は数えるほどです。源氏にとって大部分の女性は「恋」の対象でした。
六条御息所も源氏の ”恋” 人の一人でしょう。
昔から「恋愛」を説明するのに使い古された「心」の位置。
「『恋』は下心、『愛』は真心」です。
横道に逸れましたので、ここから能楽「葵上」をサラッと。
愛と嫉妬の能「葵上」
生霊
生霊となった六条御息所が登場する番組のシーンを並べます。
照日の神子の法で生霊が登場し、嫉妬に駆られた生霊は葵上を後妻打ち(うわなりうち)。
嫉妬の鬼
横川の小聖の祈祷で嫉妬の鬼となり、激しく争います。
そして成仏…
そして最後は成仏して…。
葵上は何処?
番組のシーンを見て気付いた方がいると思いますが、タイトルの「葵上」は何処に?
シテの六条御息所、ワキの横川の小聖、地謡、囃子方などは確認できますが、「葵上」が見当たりません。
実は本舞台に「葵上」はしっかりと登場しています。
スポットライトが当たっている小袖。この小袖が床に臥せた葵上です。
謡本で確認を。
謡本右下の出し小袖が病床の葵上を表しています。
この表現、能の醍醐味です。
能面
併せて角度で変化する能面の表情。
歌舞伎の隈取のような派手さがないのに、能楽師の所作で内面の感情まで表現しています。
能面の表情の変化を可能にするのは能楽師の鍛錬された所作です。
Wikipediaに「葵上」で使用する般若面についての記載がありました。
”「葵上」の題で描かれた御息所。能曲「葵上」において御息所の生霊を表現する鬼女面は、後に般若面の代表となった。(出典:Wikipedia)”
尚、”歌舞伎の隈取のような派手さ” と表現しましたが、決して歌舞伎が嫌いな訳ではありません。何度か歌舞伎座へ足を運んでいますし、最初に訪れたときには、恐らく外国人観光客向けであろう歌舞伎コースターを購入しています(笑)
金沢能楽美術館、石川県立能楽堂
能が盛んな金沢。そんな金沢にある金沢能楽美術館にも能面が展示してあります。
金沢21世紀美術館のすぐ横です。
時間に余裕があれば、前回ご紹介した石川県立能楽堂とともに金沢市の文化に触れてみては如何でしょうか。
まだまだ書き足りませんが、2月から連続した「源氏物語」関連ブログは今回で終了です。