氷室の日
金沢市の7月1日(旧暦の六月朔日)は「氷室の日」です。
氷室饅頭を食べて無病息災を祈る日で、この日の前後には推しのお店の商品を配ったり、また頂いたりと、氷室饅頭を見ない日はありません。
この時期の金沢市民はご飯より氷室饅頭を食べる量が多い=一日三食氷室饅頭とも言われています(笑)
今回は氷室饅頭自体の味や種類についてのブログではありません。
単に氷室饅頭に関する素朴な疑問を綴っています。
(写真は撮り溜めしたもので、今年のものだけではありません。また、以下、お店の敬称は省略させていただきます)
徳川幕府に氷を献上する日
「氷室の日」。
7月1日(旧暦の六月朔日)に加賀藩が徳川幕府に氷を献上していた日です。
当時の夏の氷。
とても貴重なものでした。
加賀百万石。
徳川幕府に睨まれないように気を使っていたでしょうね。
冬の間に氷室と呼ばれる貯蔵庫に保管した雪を夏になって取り出し(これを氷室開きと言います⇒氷室饅頭の由来の次に写真付で説明してあります)、飛脚(加賀飛脚、氷室飛脚とも)が金沢から江戸まで運んでいました。
金沢から江戸。北陸新幹線とほぼ同じルートを通ったそうです。
新幹線だと2時間半ですが、当時10日以上かかった山あり谷ありの約500kmの距離を昼夜を徹して四日で運んだという過酷な道程でした。
下記のYouTubeはとても参考になりました。
随分前になりますが、NHKのタイムスクープハンターで実際に人間が運んで実験している番組を観たことがあります。峠越えが大変そうでした。
氷室饅頭の由来
各和菓子店で氷室饅頭を購入すると、付属する栞等に由来の説明があります。
越山甘清堂のWEBサイトから引用すると、
”金沢では藩政のころ、6月1日(現在7月1日)は徳川幕府に氷室の氷を献上する日と決められていました。江戸まで無事に氷が届くようにと、供えられた氷室饅頭は、氷室の節句に大切なものの無事を祈り無病息災を祈って麦まんじゅうを食べる習慣として広がりました。(出典:越山甘清堂WEBサイト)”
飛脚の過酷な道程の無事を祈願して、神社に万頭を奉納したのが始まりとのこと。
もっとも、それ以前から麦まんじゅうを娘の嫁ぎ先に配る習慣があり、それが元となったという説もあります。
後者の説だと、
”娘の嫁ぎ先へ、ちくわや炒り米を添えて届ける風習もあります。(出典:越山甘清堂WEBサイト)”
とありますから、この時期に出回る氷室ちくわも納得です。
「氷室ばぁむ」など氷室の日に肖った商品も増えていますね。
今回は氷室饅頭がテーマですので写真だけ載せます。
最初は麦まんじゅう(塩氷室)だったのが、より製造のしやすい酒まんじゅうが主流になっていったようです。麦まんじゅうは今でも見かけますね。
便利な食べ比べセットにも、酒まんじゅうと麦まんじゅうが並んでいます。
尚、谷屋の由来に記載されている「おじゃごと」。これは「ままごと」のことだそうですが、私は知りませんでした。
氷室開き
現在では湯涌温泉での氷室開きが有名で、地元のニュース番組では夏の風物詩として取り上げられます。
藩政時代、氷室は幾つも存在していたらしく、文献に拠れば金沢城内の氷室の氷を献上していたようです。
実際、兼六園内の山崎山の裏手にも氷室跡の立札がひっそりと。
氷室饅頭に関する素朴な疑問
さて、ここからが本題です。
氷室饅頭の表記
このブログでは「氷室饅頭」という名称を使用していますが、皆さんは疑問に思ったことがありませんか?
氷室饅頭の表記には、「氷室饅頭」、「氷室万頭」、「氷室まんじゅう」、「氷室酒まんじゅう」などの他に、「氷室」だけのものや表記のないものまで。
勘が鋭い人はもう気付いたと思いますが、これは商標登録の絡みかな?、と。
以下、表記別の写真を載せますが、お店を網羅している訳ではありませんし、拡大したものもあるので不鮮明な写真が多くなっています。あしからず。
氷室饅頭
氷室万頭
氷室まんじゅう
氷室酒まんじゅう
氷室
表記なし
雑感 その一
食べている分には気になりませんが、いざ写真を並べてみると、表記の種類が多いこと、多いこと。
中には包装紙が「氷室饅頭」で、本体が「氷室万頭」のものも。
同じお店で「氷室饅頭」または「氷室万頭」と「氷室」を併用しているケースもあります。
あくまで推測ですが、酒まんじゅうと麦まんじゅうで使い分けているのかな!?
商標登録
氷室饅頭
さて、途中で出てきた商標登録に話を戻します。
結論から書きますと、「氷室饅頭」は越山商店(越山甘清堂)が商標登録しています。
それも平成30年(2018年)2月。ごく最近の事です。
ただし、あくまで越山商店(越山甘清堂)が属する金沢生菓子専門店会が法人格を有していないので、会を代表して商標登録を行ったとのこと。
金沢生菓子専門店会のWEBサイトには、上のようなお知らせがありますが、決して金沢生菓子専門店会および会の加盟店が独占するのではなく、商標の使用については 「県内の菓子店にオープンにする」ということです。
詳細は「石川県中央会々報 2018年№2」の「知的財産権あれこれ ~「氷室饅頭」の商標権~」をどうぞ。
下記リンクにPDFで保存されています。
https://www.icnet.or.jp/kaiho/2018no2.pdf
氷室
今回のブログを書くにあたり、初めて知ったことがもう一つありました。
実は「氷室」も商標登録されていたということです。
それもなんと昭和29年(1954年) 7 月に森八によって。
雑感 その二
先ほどの「石川県中央会々報 2018年№2」の「知的財産権あれこれ ~「氷室饅頭」の商標権~」に拠れば、「氷室」も、商標の使用については 「県内の菓子店にオープンにする」ということだそうです。
勿論、商売ですからいろいろあったとは思いますが、老舗二社の決断によって美味しい氷室饅頭を食することができます。
流石に「氷室万頭」と「氷室まんじゅう」は登録商標検索では該当なしでした。
雑感 その三
今回写真を整理していて、「氷室饅頭」を商標登録した越山商店(越山甘清堂)の表記が「氷室万頭」で、
森八の表記が「氷室饅頭」、それも「登録商標」までしっかりと印刷してあることに気付きました。
じっくり眺めるといろんな事が分かってきますね。
雑感 その四
最後になりますが、「氷室」や「氷室饅頭」といったごく一般的な名前も商標登録できるんですね。