石川啄木 一握の砂
ゴールデンウィークの10連休で帰省された方も多いと思います。
故郷を離れて都会で暮らしていると、
“ふるさとの訛なつかし
停車場の人ごみの中に
そを聴きにゆく”
(出典:石川啄木「一握の砂」)
ですね。
私も大学入学以降、生まれ故郷の金沢を後にしていましたので、この心境は共感できます。
お相撲さん(力士) バスガイド 花魁(おいらん)
訛ってるよと言われた時代
その昔、方言は「訛ってる」などと馬鹿にされることも多かったようです。
お相撲さん(力士)の喋り方、バスガイドの話し方、古くは花魁(おいらん)言葉。これらの独特の話し方は、地方訛りを隠すために出来上がった言葉遣いだそうです。
“かわいい” 方言
最近では、「女子のかわいい方言ランキング」で東北弁が上位にランクインするなど、方言に対するイメージは変わりました。
そもそも共通語(標準語)も東京の方言ですし……。
でも、鹿児島を旅行で訪れた時、もし共通語(標準語)がなかったら、と思いました。
ところで、西郷隆盛と勝海舟はどんな言葉で会話していたのでしょうね。
それと、西郷どんと愛加那の実際の会話も聞いてみたかったな。
松本清張 ゼロの焦点
以前、松本清張の「ゼロの焦点」を題材に幾つかのブログを書きました。
金沢市が舞台ですが、そのとき金沢弁で気になったことがあります。
大家の金沢弁!?
小説「ゼロの焦点」で、金沢で失踪した夫、鵜原憲一の下宿先を妻の鵜原禎子たちが訪ねます。
そこの大家の金沢弁(?)は、
“なんぞ御用でっしゃろか?“
で会話が始まると、
”酒もあがらへんし、そらおとなしい人だす。うちを出やはる頃から出張がだんだん 忙しくならはってな”
で終わります。
金沢弁も関西の言葉に似てはいますが、小説の大家の言葉遣いは……。
大阪弁?京都弁? 一体全体どこの言葉だと、非常に気になったことを憶えています。
砂の器 方言周圏論
清張の小説「砂の器」では、方言周圏論を利用した謎解きの重要な設定があります。
これを知っているだけに、「清張ほどの作家が…」と残念に思いました。
ゼロの焦点は、砂の器より前の作品です。清張が「方言周圏論」を知る前ですかね。
流石に映画ではそれらしき喋り方になっていましたが。
金沢弁
大学の友人
大学時代、夏休みを利用して金沢へ遊びにきた友人がポツリ。
「金沢の女の子、綺麗なんだけど、あの顔から『そやじぃ~』『そやうぇ~』『違うげん』が出てくると…」
誤解なきよう。彼は決して方言否定論者ではなく、銀座のど真ん中でも彼の故郷の方言で喋る人間です。
金沢弁とフランス語とダニエル・ビダル
私自身も大学生になって最初の夏休みの帰省時、
「『じぃ~』は『zíː』、『うぇ~』は『wéi』、『げん』などのガ行は『鼻濁音』で発音したほうが綺麗に聞こえる。金沢弁向上委員会を作ろう。決して金沢弁自体の否定ではなく、発音を少し変えるだけでフランス語のように聞こえるから」
と同窓会で発言し、女性陣の失笑を買った経験があります。
フランス人が日本語で歌っています。上記の方法を実践すれば、金沢弁もこういう風に聞こえるかも。参考までに、どうぞ。
オー・シャンゼリゼ(日本語) Les champs Elysées/ダニエル・ビダル
ゆすりイントネーション
昨今はテレビの普及で、昔のようなコテコテの金沢弁を聞くことも珍しくなりましたが、少し寂しい気も。
ただ、金沢の人が共通語(標準語)っぽく喋ろうとしても、「それでぇえ」「だけどぉお」などの「ゆすりイントネーション(間投イントネーション)」となります。
うねり音調とも呼ばれるこのイントネーションは、地元テレビ局の街頭インタビューに答えている地元の方の喋りで耳にすることができます。
ネイティブの金沢弁
半世紀以上前になりますが、私の小さい頃は、周囲、特に金沢の旧市内には、極めてネイティブに近い金沢弁を喋るお年寄りが多かったように思います。テレビの影響も少なかったからでしょうね。
「ごきみっつぁんな」「あんやと存じみす」「どこ行きまさるが?」など、柔らかいイントネーションの言葉遣いだった記憶があります。(記憶で書きましたので違っているかも…)
その頃聞いていた金沢弁と、大学の友人が聞いた頃の金沢弁とは違いがあるような…。
最近は、さらに違ってきているように感じています。
金沢弁の変化
恐らく、交通の利便性の向上、通勤圏の拡大等々で、金沢以外の言葉が混ざってきたのではないでしょうか。
大学入学以降、長い間金沢を離れていたので、故郷の言葉の変化に敏感なのかも知れません。
あくまで個人的な考えですが、石川県南部(加賀地方)の言葉は、イントネーションなどが福井に近いような気がします。その石川県南部(加賀地方)の言葉が、金沢弁に混ざってきていると思います。
以前、「(石川県の) 橋立町には真宗大谷派 福井 別院橋立支院があります。福井の方が近いためだと思います。」と書きました。言葉遣いもそうですかね。方言周圏論か…。
手元に、金沢弁の方言集があります。昭和60年の冊子です。34,5年前ですが、現在では既に死語と思われる言葉も載っています。言葉は生き物ですね。
北陸三県の方言
富山
富山と石川の方言は似ています。
東京に居た頃、富山へも行きましたが、自分の記憶の中にある金沢弁と、今、目の前で聞いている富山弁との違いが殆ど分かりませんでした。
一度、取引先の自宅へ伺った時、お孫さんがちょこちょこ歩き回っていました。その時、お孫さんへ「ちんちんかいとろ」の一声が…。これはビックリしました。意味は・・・。富山出身の柴田理恵さんがテレビでよく説明していますね。
その一回だけです。違うなと思ったのは。
福井
北陸三県では福井弁は異質ですね。イントネーションや語尾で、すぐに福井の人だと分かります。福井県の南の方は関西の言葉に近いらしいのですが、行ったことがありません。
やはり、外様の加賀藩だった石川・富山と、徳川家の親藩だった福井の違いでしょうか。
言葉遊び
方言の面白さや特殊性は全国各地区にもあります。
このまま金沢弁について書いていくと長くなりますし、金沢以外の方には興味もないでしょうから、最後に金沢弁の言葉遊びを。
二段活用
「ネジ、ねーじ!?」(ネジ、ないんじゃない!?)
三段活用
「ネガ、ねーがんねーが!?」(ネガ、ないんじゃない!?)
先ず説明しますと、フィルムを現像したものがネガです。
ネガ? デジカメに慣れた現代では「?」でしょうね。ひょっとするとフィルムも知らない?
今では、抵抗なく何枚でも撮っています。昔は、フィルムを買って、写して、DPE店へ持ち込んでいました。
写真って高いものでしたから、カシャカシャと何枚も撮れないものでした。ピンボケもありましたし…。
今のようにその場で確認できませんので、出来上がってきた写真を見て、映りが悪いなどと残念がっていました。
美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに
専門知識がないと、今のように簡単に修正もできませんでした。
バランスがおかしいほど目の大きい修正写真は不可能でしたから、SNSのプロフィール写真の修正もできませんでしたね(笑)
まさに、「美しい人はより美しく、そうでない方はそれなりに」写りました。
写真と言うものは正直なものでした。
1980年CM 富士写真フイルム フジカラープリント お名前編 岸本加世子 樹木希林 ACCグランプリ
四段活用
「しましまにしまっしま!」(縞々にしなさい!)
男男女女
「おとこおっとこおんなおんな」(男ばかりのところに女は居ない方が良い)
時代に合わせて、柔らかく訳しました。
女男男女
「おんなおっとこおとこおんな」(女ばかりのところに男はいない方が良い)とも。これも、時代に合わせて、柔らかく訳しました。
今回は以上です。